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残るはシリンダーヘッド。今回はヘッド全体に手を加えることとなりました。バルブ・スプリング・アッパーカラー・バルブガイド・シートリングを交換です。以前のスポーツスターのヘッド修理でも述べましたが鉄やステンレスのバルブと銅系のバルブガイドの組み合わせは短命ですが、今回の黒いバルブ。よくブラックダイヤモンドバルブと呼ばれる「窒化ステンレスバルブ」というステンレスバルブを窒化させて表面を改質させたバルブ。同じステンレスでもこのバルブとリン青銅のガイドの相性は抜群です。

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上はヘッドガスケット面の面研。あくまで荒れた面を整えたいだけなので切削は最小限に。追い込みすぎると圧縮比が上がってしまいます。下はプラグホールの座面修正。皆様のヘッドはプラグの周りに放射状のすすはありませんか?長年プラグを付け外しされた座面は凹みができて最後はプラグとヘッドのわずかな隙間から圧縮が漏れてしまいます。先ほどのすすというのは圧縮が漏れた跡です。ヘッドがばれているこんな時に対処しておきたいものです。

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バルブ周りはこんな感じです。MANREY製ステムシール、KIBBLE WHITE製バルブとスプリング、SIFTON製アッパーカラー。カムをハイカムへ変更する際には特にスプリングとカラーの変更が必要となりますが、純正カムや同等のおとなしめのカム(ANDREWS Jカム等)でもスプリングとカラーの変更をおすすめします。理由の一つは下の画像。右のスプリングが純正、左が社外。バルブスプリングはご覧のとおり2個で1セットになります。右の純正は内側と外側のスプリングの周りに隙間があり、社外は隙間がありません。隙間のある純正はサージングと呼ばれるスプリングの不正な動作を誘発させる可能性を秘めています・・・。

さて、サージングとは?

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こんなしょうもない絵で恐縮です。不正な動きというのは簡単に言うと右の赤い矢印のような動きです。バルブはガイドに支えられてまっすぐな動きをするわけなので右の動作よりも左の動作の方が理想的です。また「レート」とはスプリングの圧縮圧力の事ですが、これも純正は社外に比べレートが低いのでやはりサージングの発生の可能性に一役買ってしまいます。軟らかいバネが硬いバネより四方八方に飛んでいきたがる様子からなんとなくイメージが付くかと思いますが・・・。ちなみに理想的なレートは計算でおおよその数字を導き出せるのですが、今回は4ヵ所共に理想的なレートのちょい低めのセットになりました。

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完成です。このあと車体に乗せもろもろの調整を行い、約100キロの試乗をして納車となります。納期は早い時は1ヶ月、遅くとも2ヶ月以内といった感じです。工賃はエンジンのモデルを問わず今回紹介した基本的なオーバーホール内容で一律¥150000でやらせていただいています。今回のエンジンは工賃のほかに部品代・外注代・オイル代で約¥550000となりましたが修理の方向性や修理前のエンジンの具合などで金額は前後しますので修理前に全バラになったエンジンをお客様に見ていただき、ご予算と修理内容の妥協点を探りながら作業にとりかかっています。また、当店では基本的に「腰上オーバーホール」等の修理はおすすめしません。例えばクランクに問題を抱えているのにクランクの点検をしないままピストンを換えてシリンダーをボーリングしてもピストンは早い段階でまた損傷してしまいます。エンジン内部は部品と部品が関連して構成されているのでトータルで見直すことがベストだと考えています。決して安い修理代ではありませんが1台のエンジンを何回も開けてダラダラ修理するより1度できっちり修理を終えた方が結果的に安上がりかと思います。

長くなりましたが、当店の修理に対するスタンスに少しでも興味を持っていただけたら幸いです。エンジンに不満をお持ちでしたらぜひご相談ください。

2013/8/3過去のブログより